大手商社における最近の動きー三菱商事、三井物産、丸紅

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はじめに

[トレーダーズ・プレミアム]リアルタイム株式ニュース

 五大商社の内、私が株式を保有している三社は四半期決算の発表を直近の8月3日(火)に控えております(三菱商事:8月3日(火)14時15分予定、三井物産:同日13時30分予定、丸紅:同日11時予定)。決算は気になるところではございますが、本ブログでは足元の事業に関連するニュースが先週集中的に出されましたので横断的に紹介し、可能な限り分析を致したいと思います。

トレーダーズ・プレミアム

三菱商事①ー原生林再生プロジェクト

 三菱商事株式会社は、2021年7月29日(金)にオーストラリアにて原生林再生プロジェクトを通じたCO2の吸収等を行っているAustralian Integrated Carbon社(エーアイカーボン社)の株式40%を取得した旨、公表致しました(本記事は、三菱商事株式会社HPを参照した)。

 そもそも、オーストラリアには豪州温室効果ガス排出削減基金制度(Emissions Reduction Fund)
が存在し、クレジットの買取を通じて、政府が排出削減事業に対して幅広い直接的な補助を行うことを目指した制度が設けられています。

 このような制度が存在することをふまえ、エーアイカーボン社による原生林再生プロジェクトは、過去の伐採や過放牧によって消失した原生林の再生を促すものであり、農家の牧畜プロセス見直し・改善を通じて原生林を再生し大気中のCO2を吸収・固着するものであります。そして、これらの行為によりオーストラリア政府が公式に認証するカーボンクレジットを獲得・販売する事業です。エーアイカーボン社は、年間では最大約500万トン、2050年までに累計約1億トンのCO2吸収に貢献出来る見込みです。 

 オーストラリア政府は、既に指摘したようなカーボンクレジットの買取制度を確立しており、これまでにも多数の入札実績があります。同入札市場における取引量は、世界有数の規模に達し、現在も成長を続けています。また、上記のプロジェクトは、脱炭素の手法の中でも高い事業性とコスト競争力を両立する上、生物多様性の維持や土壌改善、干ばつへの耐性向上、農家の収益安定化等をもたらすことから、オーストラリア政府は同プロジェクトの導入を奨励し、同国のパリ協定目標達成における重要な取り組みとして位置付けております。 

 三菱商事はCO2排出量削減に向け自助努力を継続すると同時に、このような原生林再生プロジェクト等を通じて大気中のCO2を吸収し、地球規模の低・脱炭素社会の実現に貢献することが期待されます。

三菱商事②ー水素サプライチェーン事業

 2021年7月30日(金)、三菱商事株式会社は、オランダ王国のロッテルダム港湾公社(Port of Rotterdam Authority:以下、POR)、クーレターミナル(Koole Terminals)社、および千代田化工建設株式会社(以下、千代田化工)と、千代田化工の水素貯蔵・輸送技術(SPERA水素TM)*を活用したロッテルダム港への水素輸入による国際間サプライチェーン構築に関する共同調査を実施することに合意した旨、公表しました(本記事は、三菱商事株式会社HPを参照した)。

 PORは2020年5月に水素マスタープランを公表し、北西ヨーロッパのグリーン水素(=製造過程でもCO₂を排出させることなく製造される水素のこと)のサプライチェーン構築を促し、かつ、水素輸入の拠点となるべく、2050年までに年間2,000万トンの水素をロッテルダム港で取り扱うことを目標に2025年に10万~20万トン、2030年には30万~40万トンの水素取扱量を目指し取組みを推進しております。 

 千代田化工の水素貯蔵・輸送技術(SPERA水素)は、2020年12月にブルネイと日本を結ぶ世界初の『国際間水素サプライチェーン実証』を完了し、この取り組みを推進する上で重要な役割を果たすことが期待されており、本技術の導入および関連する事業機会に高い関心を持つ上記企業間で協議を重ねて参りました。

 三菱商事は上記の水素サプライチェーン事業の構築にあたって(技術面というよりは)ビジネス面を主導し、欧州の長期的なCO2排出量削減、エネルギー・トランジション(エネルギー転換期)に向けた取り組みを通じて、地球環境の保全・持続可能な社会発展に貢献していくことが期待されます。

 三菱商事の最近の動きとしては、米ドル建無担保普通社債発行を指摘できます。詳細は、以下をご覧ください。      https://www.syagakuken.com/syasai202107/

三井物産―チリ・フリートマネジメント(車両管理)最大手事業会社の子会社化

  2021年7月28日(水)、三井物産株式会社は、チリ最大手のフリートマネジメント事業会社であるAutorentas del Pacifico SpA を傘下に持つInversiones Mitta SpA社(Mitta社)を連結子会社とする旨、公表しました。三井物産のMitta社の株式持分は49%から60%に増加します(本記事は、三井物産HPを参照した)。

 Mitta社はチリで約1万9,000台の車両を保有し、鉱山・エネルギー業界を筆頭に高い業界シェアを持つ自動車オペレーティングリース(BtoB)やレンタカー(BtoBおよびBtoC)を中心としたフリートマネジメント事業(車両管理事業)を展開しています。三井物産は2018年5月、Mitta社に49%出資参画しました。

 今回の連結子会社化により、三井物産のネットワーク・総合力を活かし、Mitta社の更なる規模拡大と顧客への付加価値提供を推進します。特に、DXへの取組み、カーボンニュートラルを踏まえたEV/FCV投入などを進め、フリートマネジメント機能(車両管理機能)を強化し、顧客のフリート利用コストを最適化します。またMitta社の知見を活かし、今後は中南米・アジア諸国などの成長市場において、社会・顧客の変化に合わせたサービスの提供を目指します。

 三井物産は、モビリティを注力分野の一つとしています。この領域では、BtoB、BtoC共に「所有」から「利用」へのシフトが進んでいるという見逃せない変化があります。リース、レンタカー、カーシェアなどのサービスの需要が拡大するとも予想できます。三井物産はMitta社をモビリティーサービスのプラットフォームの一つと位置付け、サービス事業者・顧客に対して車両の提供・管理や、新規サービス提案を行い、同領域での変化に対応し、その成長を取り込んでいきます。

丸紅ー関西圏における水素供給モデルに関する調査開始

 2021年7月28日(水)、丸紅株式会社は、岩谷産業株式会社・デロイト トーマツ コンサルティング合同会社・日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社と共に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構から「関西圏の臨海エリアにおける水素供給モデルに関する調査」を受託した旨、公にしました(本記事は、丸紅株式会社のHPを参照した)。

 そもそも、水素社会を実現するためには、国内での水素供給体制の整備を推進するのは勿論ですが、同時に未利用エネルギー等を活用した安価な輸入水素の活用が不可欠です。とりわけ、国内での輸入水素の受け入れから需要地までの輸送を含めた供給モデルを検討する必要があります。端的に指摘すると、輸入水素の利活用候補地となり得る臨海エリアでの需要の着実な積み上げと効率的なサプライチェーン構築に向け、水素供給に関わるコスト分析と実現に向けた課題の抽出が極めて重要です。

 これまで輸入水素の利活用候補となり得る関西臨海エリア周辺での需要面でのポテンシャルと供給方法が検討されてきました。今後、川崎重工業株式会社、関西電力株式会社、ENEOS株式会社、株式会社大林組とも協力の上で、関西圏の水素受入基地の候補地比較、受入基地での揚荷・貯蔵、受入基地から需要地への輸送手段(水素ガス高圧パイプライン、液化水素ローリー)の調査と事業性を含めた供給モデルの検討を行い、2021 年度中に調査結果をまとめる予定です。

 本調査が関西圏の水素社会、脱炭素社会の実現に貢献していくことが期待されます。

 丸紅に関する最近の動きとして、日豪間のアンモニアサプライチェーン構築を指摘できます。詳細は以下をご覧ください。                                    https://www.syagakuken.com/marubeni-ammonia/

まとめ

 各社とも今後の時代をふまえた新しい取り組みが目立ちます。とりわけ、三菱商事・丸紅ともに水素サプライチェーン確立に向けて力をいれていることが分かります。それだけ重要であることが伝わってきます。

 業界の雄である三菱商事の取組は、二酸化炭素削減という全世界的な課題を解決するための取組であり、現段階では一般人には馴染みのない側面もありますが、次世代のエネルギーのシステムが大きく変わるであろうと予測し、事前に包括的に把握しビジネスにつなげ安定的な収益を狙っているのであろうことが垣間見えます。いずれも、手堅い戦略で実を結びつつあるというニュースであろうと理解しました。また、商社が手掛けるにふさわしいダイナミックで時代を切り拓く取組でした。

 なお、上記は一株主から見た雑駁な感想に過ぎませんので、誤りがあるかもしれませんし予測が正確ではないかもしれません。その点は、ご留意ください。

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