目次
要点
本ブログでは、日本製鉄・JFEの決算・株価等について述べています。
業績を上方修正・増配を発表したことから、日本製鉄の株価は上昇基調にあり、JFEも同様です。私の経験では鉄鋼大手の株価は国内外の景気の影響をモロに受け、不景気の時の株価はどん底まで沈みますが、景気回復の兆しがあれば早い段階で株価に影響し、一気に株価が高くなることも有り得ます。そのため、売り買いの時期を適切に見定めれば、鉄鋼株で大きなリターンをもたらすことができる可能性があります。かつて、退職金をはたいて住友金属株を株価50円前後で20万株仕込み、500円で売却したという都市伝説が存在しました(リアルなものかは分かりかねますが、個人的にはこれに近い方がおられても不思議ではないようにも感じます)。
株式初心者の方に対して助言をするとすれば、株式初心者の方がじっくり取り組む手法として、株価が安いときの鉄鋼大手の株式を購入し、株価が上昇するまでじっくり待つというのが愚直なように見えて、最も確実で利益の最大化を図り得る可能性が高いように思えてなりません。時間としては場合によれば10年以上かけることも想定しておくべきですが、時間をかけられるのが個人投資家の最大の強みであり、その強みを生かせるのは景気変動で株価の変動が激しい銘柄であり、かつ、経済的・社会的重要性があり倒産の心配が少ない鉄鋼株、特に大手鉄鋼株でしょう。株式初心者の方で銘柄選択に悩まれているのならば、まずは日本製鉄かJFE を検討対象にされるのは、適切であろうと考えます。
以上は、私の個人的な考え方ですのであくまで参考程度にして頂き、ご自身の投資行動は自分で考えた上でご判断下さい。株式投資は自己責任が大原則ですので。
日本製鉄ー第1四半期決算
新日鐵と住友金属が2012年10月に経営統合し、新日鐵住金となりその後日本製鉄と称しています。業績の概要は、下表の通りです。鉄鋼大手は、コロナの前から需要減をはじめとする経営上の課題に直面しており、その課題解決の必要性とともにコロナの影響があり、2019年度の決算は大変厳しいものでした。2020年度は後期に巻き返しを図ることができ、更に本年は上方修正し通期連結純利益を2400億円から3700億円とし、昨年は実施されなかった中間配当を実施し配当金を1株55円とするなど、企業業績としては絶好調ですね。その理由としては、国内外の需要拡大に加えて昨年度の大胆な事業撤退・休止判断といった経営判断が適切であったことが挙げられます。
そして、経営統合後(2012年10月)に粗鋼生産量が減少したにもかかわらず、ROS(売り上げに対する利益率)の改善により連結営業利益(連結事業利益)が6000億円(連結純利益3700億円)に到達する見通しです。そこで、会社側は、2025年度には粗鋼生産量がピークの4823万トン(2014年度・日本製鋼分含む)から3800万トン(2025年度)に減少しても、ROS(売り上げに対する利益率)10パーセント程度を目指し利益を確保していく旨を宣言しています。
第1四半期 連結純利益 | 通期 連結純利益 | 中間配当 | 期末配当 | 備考 | |
2018年度 | 853億円 | 2511億円 | 40円 | 40円 | コロナの影響なし |
2019年度 | 333億円 | 4315億円の赤字 | 10円 | 0円 | コロナ+経営上の課題あり |
2020年度 | 420億円の赤字 | 324億円の赤字 | 0円 | 10円 | コロナの影響+緩やかな景気回復 |
2021年度 | 1621億円 | 3700億円予定 | 55円予定 | 未定 | 本年度 |
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JFEー第1四半期決算
JFEホールディングス株式会社は、川崎製鉄と日本鋼管が経営統合したJFEスチールを主力とする持株会社です。日本製鉄と並ぶ大手鉄鋼会社です。2019年度は鉄鋼業が全般に厳しく、赤字を計上することになりましたが、2020年度の後半から緩やかに景気回復し、2021年度にあっては、当初の通期連結純利益を1300億円から8割増の2400億円と上方修正し、昨年は実施されなかった中間配当を1株60円で実施すると明らかにしました。その理由について、会社側は国内鋼材需要の回復傾向・外需に牽引される形での国内製造業が堅調であること、海外については中国の内需が堅調で鋼材需要が回復する見通しであることを指摘しています。おおまかな傾向は日本製鉄と同じです。但し、粗鋼生産量に関しては、2650万トンを維持し減らすことは考えていないようです。
第1四半期決算 連結純利益 | 通期 連結純利益 | 中間配当 | 期末配当 | 備考 | |
2018年度 | 567億円 | 1635億円 | 45円 | 50円 | コロナの影響なし |
2019年度 | 197億円 | 1977億円の赤字 | 20円 | 0円 | コロナ・経営上の課題あり |
2020年度 | 391億円の赤字 | 218億円の赤字 | 0円 | 10円 | コロナの影響+緩やかな景気回復 |
2021年度 | 619億円 | 2400億円予定 | 60円予定 | 未定 | 本年度 |
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日本の鉄鋼大手の特色
日本の鉄鋼大手はかなり前から景気変動に左右されないようなビジネスモデル構築に尽力していました。その会社でしか作れないものを作るということです。電磁鋼板やシームレスパイプ、電車の車軸はその代表的なものです。鉄鋼大手は高い技術力を維持することで、生き残りを図っています。そのため、鉄鋼大手は世界的にも技術力が高い点は誇るべき点です。
私は、鉄鋼大手が高い技術力を維持し国際競争力を有している限りでは、粗鋼量が減少したとしても評価していきたいと考えています。
(2021年10月追記)
2021年秋、日本製鉄株式会社は特許権侵害の件で海外製鉄メーカーと共に自動車メーカーのトヨタを提訴したことは報道等で明らかなことかと存じます。2021年8月に実施された日本製鉄の第1四半期決算説明会において、紐付き価格是正への取り組み強化(国際的に見て適正なマージンの確保)を経営上の重要課題の一つとして提示しています。このような取り組みは、当然のこととして株主として賛同するところです。更に言えば、毎度のように顧客から値切り続けられろくに利益が出せず、しかも、莫大な開発費を投じて生み出された電磁鋼板のような優れた技術流出が懸念されるのであれば、もはや自動車鋼板を製造し続ける意味がどれほどあるのか疑問のようにも思います。ろくに利益を出せないのであれば事業撤退という重大な決断も時には必要ではないかとも感じます。そのような重大な決意をした上での提訴であったようにも推測できます。日本製鉄がトヨタを提訴した背景には、これ以上の我慢はできないという日本製鉄サイドの怒りがあるのではないでしょうか。
株価ー特に株式投資の初心者の方へ
両社ともに2018年度を凌駕する内容の決算であるだけに、今後とも株価は基本的に上昇基調で推移するものと考えるのが自然でしょう。既に現在よりも安い価格で仕込んでいる方は売り時が大変難しいでしょう。
株式初心者に助言できるとすれば、以下の2点です。
- 株価を毎日チェックしよう。
- 最高値での売却は奇跡。
第一に、購入した銘柄はもちろん、購入したいと考えている銘柄の株価は毎日チェックすることが大切であるということです。毎日、株価を確認していると自ずと相場観が養われます。相場観が養われるのか否かは利益を出せるのか否かに直結する重要な点ですが、相場観を養うのには天才的な株式投資家以外は経験によるしかないですから。
第二に、最高値で売り抜けようなどといった奇跡を狙ってはいけないということです。欲をかきすぎると、売り時を逃してしまい最終的に利益を得ることができないということです。まずまずの高値で売却できれば自分を褒めてあげて下さい。他方、買いに関してですが、現在の業績からすれば株価は安値ですので、今は買いであると考えています(もちろん、ご自身でよく考えた上でご判断下さい。株式投資は利益も損害もすべて自己責任ですから)。
かつて2006年暮れから2007年夏にかけて、鉄鋼の大相場がありました。その際、当時の新日鉄は株式併合する前でしたので、今の株価に置き換えると日本製鉄株が9640円にまで上昇したことになります(2007年7月の最高値:当時の株価の最高値は964円ですが1000株単位で売買されていたころです)、JFEの株価は8790円(2007年7月の最高値)にまで上昇しました。平成初期のバブルのときは上記以上の株価になりましたが、バブルではない時期であっても鉄鋼株が上昇するとかなりのところまで上昇することが現実にあったということは知っておいて損にはならないでしょう。私は、両社の株主ですので2007年のレベルまで株価が上昇することを期待しています。
関連銘柄
私は、元々石炭や金属資源株にも興味・関心があったため、いくつかの銘柄に注目していた時期がありました。そんな中で、高炉で鉄を作るのに不可欠な材料であるコークスを供給している日本コークス工業(旧三井鉱山、証券コード3315)についても注目しておりますが、現状、低位株の扱いであることには株主として納得のいくものではありませんが、鉄鋼大手と同様に第1四半期の業績が良いこと・増配を表明したこともあり、株価の動きがこれまでとは明らかに違うこともあり、いずれ然るべき株価になるものと期待しています。鉄鋼業が活況を呈している現状からすれば、関連する銘柄である日本コークス工業株についても検討する価値はあるように考えています(最終的な投資判断は自己責任でお願いします)。日本コークス工業について書いたものは以下の通りです。ご参考まで。
1.2021年第1四半期決算についての紹介と分析 日本コークス工業ー2021年第1四半期決算(好調)
2.2021年6月定例株主総会を終えての分析(総会後) 日本コークス工業 株式関係重要書類到着
3.2021年6月定例株主総会招集に関して(総会前) 株主総会招集通知(日本コークス工業、旧三井鉱山)
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