三菱商事 株主通信

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三菱商事 株主通信

株主総会

 総会終了後かなり時間が経過しておりますので、株主の皆様には期末配当関係書類や株主通信等が郵送されて既にご覧になられた方も多くおられることと存じます。2020年度における三菱商事株式会社の株主総会は、令和3年6月25日(金)に終了しました。会社側発表による株主総会の概要は以下の通りです。                                             総会開始時刻:10時00分(昨年10時00分)                                総会終了時刻:11時27分(昨年11時01分)                       所要時間:87分(昨年61分)                               出席株主数:231名(昨年145名)、質問者11名10問(昨年8名7問)          

 令和3年6月29日に関東財務局長宛に提出された「臨時報告書」(三菱商事HPで閲覧可)をもとに決議された内容につき振り返ります。総会では、2つの議案(1号議案と2号議案)が提示されていました。1号議案は剰余金の処分の件、即ち、期末配当金(1株 67円)についてです。第2号議案は、取締役11名選任の件です。本総会において、総株主の議決権数は1478万7318個、議決権を行使できる株主数は32万7707名であるところ、議決権行使書・インターネットによる事前行使分を含め、出席株主の議決権数は1092万5339個、出席株主数12万4805名でありました。結論的には、1号議案・2号議案ともに可決されましたが、1号議案の賛成率は99.80%、2号議案は11名の候補者毎に若干の際はありますが、賛成率は92.79%~99.43%でした。1号議案、2号議案通して極めて高い賛成率であると考えられます。

配当政策

 三菱商事の配当政策は、既に「中期経営戦略2018」において明らかにされているように、株主還元は配当を基本とし、減配せずに利益成長に合わせて増配していく累進配当を方針としていたところ、2019年度から2021年度までを対象とする「中期経営戦略 2021」においても、持続的な利益成長に合わせて増配していく累進配当を継続しており、2020年度の期末配当金については1株67円とし本総会で決議されました。これで、中間配当67円とあわせて年間の配当金合計は134円となります(2020年度有価証券報告書79頁参照)。なお、配当は中間と期末の2回実施することを基本としています。

配当推移

 配当の推移は以下の通りです。                               2016年度  80円(中間30円、期末50円)                                    2017年度 110円(中間47円、期末63円)                       2018年度 125円(中間62円、期末63円)                        2019年度 132円(中間64円、期末68円)                      2020年度 134円(中間67円、期末67円)                       2021年度 134円(中間67円、期末67円)←2021年度に関してのみ予定です。

 三菱商事の採用する配当政策である累積配当は、上記の配当推移を概観する限り大変魅力的な政策だと感じます。会社側が増収増益をある程度確信できない限りなかなか公約できないだけに、累積配当を継続している点、高く評価したいと考えます。伊藤忠商事や三井住友FGも累積配当を宣言しています。三菱商事が更なる増収増益となることが確実であるのなら、株価的には現在でもそれほど高い水準ではないということになりましょう。積極的な買いを推奨する専門家もいるようですが、売り買いについては、専門家の助言も有益ではあるものの自分の財産をどうするのかについては最終的に自分が判断を下すべきでしょう。株式投資については自己責任でお願いします。

社外取締役候補者の保有株式数

 あくまで一般論ですが、複数の株主総会における議決権行使をなす際に社外取締役がどの程度の株式数を保有しているのか、気になる方もおられることと思われます。生え抜きの取締役は通常なら数万株から10万株以上保有していることも珍しくないだけに、社外取締役の保有株式数が0株、特に、著名な企業であるにもかかわらず0株というのは大変目立ちますし、株主としてはあまり好意的には受け止められない方も多いのではないでしょうか。私は株主として好意的には受け止められません。

 なるほど、資本と経営の分離という株式会社の理念からすれば0株でもいいのでしょうが、株主と同じく一定程度の株式を保有しないような者が重要な経営判断を行うことに対して、割り切れないものを感じます。個人的には、一定程度の株式数を保有しているような方に社外取締役になってほしいものだとあらためて意識した次第です。皆様はいかがお考えでしょうか。

株主通信より①ー低・脱炭素社会実現に向けた三菱商事の取組(特集1)

 日本政府は2020年10月に、2050年カーボンニュートラル宣言、即ち、2050年には温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを宣言していたところですが、更に、本年4月に2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度から46%削減すると宣言しました。世界的な脱炭素に向けた動きは無視し得ないものがあります。そこで、三菱商事としては以下の4点の取組を行っています。①グループ企業であるオランダの総合エネルギー事業会社(Eneco)がAmazonに再生可能エネルギー100%の電力供給すること、②インドネシア・ジャカルタ近郊の大規模都市開発にあたり公共交通志向型開発を行うこと、③アメリカのblue planet社・千代田化工建設・当社の三社間で、コンクリート原料である骨材製造に二酸化炭素を利用するというカーボンリサイクルの取り組みがなされること、④当社と独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が、インドネシアでアンモニアの製造・販売を行っているPAUとの間で、燃焼時に二酸化炭素を排出せず、かつ、水素含有量が多いアンモニアをクリーン燃料化する取組、の4点です。

 いずれも、中長期的視点のビジネスであり、かつ、全世界的なスケールの大きいビジネスです。かくして、商社の業務、特に、三菱商事の業務が自ら時代を創っていく側面があること及び全世界的な規模のビジネスを展開する企業であることを再認識させられるものです。更に、①~④の事業すべて海外で展開されているもしくは海外の企業と連携する形態で海外と無縁なものはありません。今の日本では成長が鈍化しておりかつての高度成長期のような増収増益が見込めない国になりました(ここ20年以上デフレで、物の値段が上昇しにくい国になりました)。それ故、(国内で事業展開するより)海外で事業展開する方が、(とりわけ成長が著しい国の)経済発展の恩恵に浴することができます。このように国内にとどまらず全世界でビジネス展開することにより、強靭な財務体質を構築し結果的に増収増益をもたらす利益構造となっているのでしょう。このような背景があるからこそ、配当面で累積配当を宣言できるのであろうと推察できます。

株主通信より②ー新たな価値創出を目指して(特集2)

 三菱商事は、かねてより事業を通じて社会課題の解決に貢献することで新たな価値を創出し、企業価値の更なる向上を目指しています。株主通信では、デジタルトランスフォーメーション(DX)即ち、データとデジタル技術を活用し顧客・社会のニーズに応え、ひいては根本的な変革をもたらす取り組みを具体的な形で紹介しています。第一は、安心で豊かな生活をサポートすることを目的とする、生活の様々な局面での細やかな支援(地域密着型ネットリテイルサービスの提供、高齢者の生活を支援する包括ケアシステムの推進等)を意図した事業をなすべく、中部電力ミライズとの共同出資で中部電力ミライズネクストを設立したことが紹介されています。第二は、DXを行うべくNTTとの共同出資でIndustry Oneを設立し、個々の企業努力だけでは解決困難な課題解決に挑んでいます。具体的には、食品龍柱業界における卸の在庫最適化ソリューションの開発を、在庫・受発注・需要予測など各社に散在していた情報を一元化し、更には、天気予報情報等の外部の情報も加味した基盤(新たなシステムとも言えましょうか)を共同開発し、実証実験の段階では在庫最大4割減、欠品率の低下に成功し、更なる模索が続けられていることが紹介されています。

 より豊かで安心な生活・社会を実現するために上記の内容は大変重要であり、更なる発展を期待したいところです。商社は、DXという近未来のインフラ整備にも関与していることを知り驚きました。同時に、商社マンはもちろんですが、商社の経営陣には、先を見通すだけの先見性・視野の広さについては特にハイレベルな能力が要求されるであろうことを痛感しました。より良い社会の実現に商社は多大なる貢献をしていることをしることができました。

株主通信より③ー復興支援の10年

 2011年3月11日の東日本大震災で三菱商事は復興支援に取り組んでいました。必要なことは迅速性と継続性であるという支援の本質を見抜き、然るべき対応をしている三菱商事に敬意を表したいと思います。とりわけ、大学教員である私としては学生支援のための奨学金事業をされていることには深い感謝の思いを致さざるを得ませんでした。その他、産業復興・雇用創出支援、ふくしまワイナリープロジェクト、も大変意義深い事業であると感じました。株式会社が天変地異の際にどこまでのことをどの程度するべきなのか、大変に難しい課題ですが、一つの示唆を与えてくれているようにも感じました。

東洋文庫ミュージアム

 今回、東洋文庫ミュージアムの無料招待券が同封されていたことと思います。一般900円、シニア(65歳以上)800円の入館料が不要になるのですから有難いことです。

住所 〒113ー0021 東京都文京区本駒込2-28-21                 電話 03-3942-0280                                アクセス 駒込駅(JR山手線南口、東京メトロ南北線2番出口)から徒歩8分、千石駅(都営地下鉄三      田線A4番出口)から徒歩7分、上富士前(都営バス)から徒歩2分                開館時間 午前10時~午後5時(入館4時30分まで)                     休館日  毎週火曜(火曜日が祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替え期間           ※併設レストラン「オリエント カフェ」

 東洋文庫の歴史的経緯については以下の通りです。                      大正6年(1917)、三菱第三代当主岩崎久彌が中華民国総統府政治顧問G.E.モリソンの蔵書を購入。
大正13年(1924)財団法人東洋文庫を設立し、図書部のほかに研究部を設けた。
日本最古・最大の東洋学の研究図書館で、蔵書は現在約100万冊。
平成23年(2011)10月、国宝・重要文化財等を中心とした貴重書を展示するミュージアムが開館(以上、文京区HPから)。

 このような自社と結びつきの文化的な色彩の濃いものを株主に配布するというのは、企業の目に見えない価値を広く株主に知らしめ、ひいては企業価値向上にもつながる取り組みなので大いに歓迎致します。目先の配当金をUPすることも重要ではありますが、株主としては中長期的な視点で投資先の企業が成長し、かつ、単に利益を上げるだけではなく社会からも一目おかれる存在になってほしいという思いがあります。株主の皆様は、いかがお考えでしょうか、ここは意見の分かれるところかもしれませんが。なお、以下で紹介しているのは、三菱財閥の創始者である岩崎弥太郎と彼を受け継ぎ三菱財閥を盤石なものにした四代につき書かれた書籍です。

なお、株主総会招集通知が出された際にも三菱商事について言及しています。株主総会招集通知(三菱商事)というタイトルで投稿しました。以下、ご参考まで。                     株主総会招集通知(三菱商事)       

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