面接①ー実例紹介

研究・教育
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要約

 本記事では、私が経験した大学教員公募における面接等についての詳細を書いています。かつて、総論的・一般論的な内容を書きましたが、今回は各論的な内容です。ケーススタディとして実例を2例紹介しています。

 大学教員公募にチャレンジしている方はもとより、専門職の転職を考えている方にも参考になるのではないかと思い、投稿しました。

本記事の意図

 本ブログの目的の一つは、情報が少ない大学教員公募に関する有益な情報提供です。また、大学教員に類似した専門職に従事している方の転職の局面においても大学教員公募の実情は一定程度参考になると考えられます。

 本年8月18日には大学専任教員(研究者教員)公募というタイトルで、過去・現在における大学教員公募に関する総論的・一般論的な内容につき情報提供致しました。その後、熟考した末、総論のみならず各論も必要だろうと考えるに至りました。要するに、過去のおいて私が体験した大学教員公募における面接等がどのようなものであったのかを可能な限り紹介する、ということです。ケーススタディとして実例を掲載します。特に問題がないようでしたら、私が経験したすべての面接等(「面接等」というのは、場合により模擬講義を含むことがあるからです)の経験を書いていく予定です。現在、新規の投稿が滞っておりますが、必ず、私が経験した面接の実態については本ブログに書くつもりです。

 現在、大学教員として教員公募の最前線にいる者として、また、教員公募を経て大学教員になった者として、守秘義務・コンプライアンスに抵触しない限りで、大学でのポストゲット・ひいては転職で頭を悩ましておられる皆様方にお伝えできることは可能な限りお伝えし、その幾ばくかでもお役に立てれば幸いです。

大学教員公募に応募していた頃

 私は、大学教員公募においてすんなりと採用が決まった方ではなく、面接に呼ばれるものの採用には至らないという生殺しのような状態が3~4年続きました。その間、私は、院生又はポスドク・非常勤講師をしつつも、論文を執筆&教員公募に応募する毎日でした。最初はそうでもなかったのですが、年々、鬱屈とした思いが強くなりました。とりわけ、年度末の3月に同期や後輩が専任のポストを得て研究室を出ていくときは、自分のことのように嬉しいことでもありましたが、自分の無力さを痛感したものです。本来は喜ぶべき年度始めの4月は、大変鬱屈した感情を抱いていたことを想起致します。

 教員公募に応募することが一般的に許されるD3になったとき、指導教授から「自由に教員公募に応募してよい」と言われていたことや、先輩の院生も同じように自由にしていたので、Jrecinに掲載されている中で自由に応募することにしました。当初は出身大学の所在する東京圏及び首都圏の大学もしくは同じく大都会である関西圏の大学に絞って書類を出していました。その後、なかなか採用されないので、それ以外の地域にも書類をだすようにしました。東京都内(特に、23区内)に所在する大学は勿論ですが東京都ではない首都圏に所在する大学でも採用に至るみちは想像以上に厳しく、なかなか面接に呼ばれることさえ多くはありませんでした。他方で、関西圏の大学とは何故か相性が良く、いくつかの大学から面接に呼んで頂きました(残念ながら採用には至りませんでしたが)。

 では、以下においてその詳細を述べていきます。本日は、2つ紹介します。なお、以下に出てくる「社会科学系学部」とは、法・経済・経営・政治等の社会科学を総合的に学ぶ学部のことです。「専門学部」とは、私が専攻する学部のことであり、一般に伝統ある学部であると認識されています。一般的には、法学部、政治経済学部、経済学部、経営学部、商学部、社会学部等を指します。専門学部に採用されることを望む教員が圧倒的多数です。私個人としては、同僚教員と研究上の対話ができることや学界ネットワークをより広く・濃密なものにするためにも、専門学部が望ましいと考えています。

 また、以下に出てくる「任期付」とは、一定の期間は雇用するものの期間満了後は解雇するという雇用形態であり、概ね契約社員のような雇用形態です。大学教員の場合、「大学の教員等の任期に関する法律」(平成九年法律第八十二号)により任期付で雇用することが法制度化され現在に至っています。落ち着いて研究・教育に励むことはできないので批判も根強いですが、公募で任期付にすると応募者が激減するのが現実(例:任期なしなら50~60人の応募があるところ、一気に10人前後の応募に留まる)なので、わたしは任期なしのところはもちろん、敢えて任期付のところも構わず公募が出れば応募していました。経験では、任期付のところだと、面接に呼ばれる可能性は任期なしのところより格段にアップしました。とはいえ、任期中に他大学に移籍できなければ大変なことになる(無職になる)可能性があるので、指導教授の中には最初から任期付のところはやめておけ、という指導をされる場合もあり、それはそれで理由のあることです(任期付雇用は研究者を舐めているとも言えます)。

 なお、「任期付」の反対概念は「任期なし」、であり、定年まで雇用されることが予定されている雇用形態です。また、任期付の弊害を避け、かつ、変な教員には早々にお引き取り頂くために、最初の数年は任期付ではあるものの、数年後に任期なしに転換するという制度を採用している大学も存在します。

 では、以下の実例(2例)をご覧ください。

関西圏底辺大学・社会科学系学部(任期付)ー不採用、面接のみ

 私がはじめて面接を経験したのは、関西圏底辺大学(大変失礼な言い方でありますが、ご容赦下さい)でした。事務局の職員の方から平日の昼間携帯に連絡があり、後に、文書でも連絡がありました。日時は先方が指定してきました。担当者の方が大変きっちりした方であったことを今でも印象深く記憶しています。

 面接に呼ばれた際、私は博士後期課程3年(D3)という大学院に在学する院生で、当時、論文本数が未だ3本なく、何故か面接に呼ばれたのでした。通常であれば、面接に呼ばれることは有り得ない論文本数ですし、質も高いとはお世辞にも言えないものでした。ただ、考えられるのは、雇用条件として任期付であったため、応募者総数が非常に少なくこいつでも呼んでおこうかとなったのではないかと推測しました。面接に呼ばれたことは大変光栄なことで、面接の経験ができたことには今でも感謝しています。

 面接においては、徹底して提出した論文の詳細について厳しく質問されました。修士論文の審査より厳しく、後に経験する博士論文の審査に匹敵する程度の厳しさでした。お前の研究能力ではまだまだだということを自ずから悟らせるための面接という側面もあったのかな、と今にして思うところです。ここでは模擬講義を課されることはありませんでした。

 ただ、学部長から最近は任期付採用となっているが、任期付採用の先生には可能な限り大学行政を振らず、研究に専念してもらっていると聞いたときはとても安心しました。後日、採用されたのが知り合いの方だったので実態を聞くと、私と同様に研究に専念して欲しいと言われたものの、大学行政テンコ盛りの状態だったとのことです。最近は、大学教員公募面接での約束、つまりは、口頭の約束は反故にされることがあるということは知っておいてもいいことかと思います。かつては紳士協定で、口約束でも可能な限り守るというのが大学教員業界の常識でしたが、現在はかなり様相が異なっているようです。

関西圏某中堅私大・専門学部①(任期付)ー不採用、面接と模擬講義

1・当日に至るまでー前の面接から今回までー

 前回の関西圏底辺大学での面接に呼ばれたもののその年度は他大学で面接に呼ばれることはありませんでした。その次の年度はどこからも面接に呼ばれませんでした。その代わり、論文執筆に全力投球していました。一応、面接に呼ばれるであろう最低の論文本数が揃いましたので、教員公募に出しまくるようになりました。以前、面接に呼ばれてからおよそ2年が経過しました。

 応募締切日から2週間程度経過した日曜日の晩、教員から自宅に電話があり、面接・模擬講義に来るようにとの連絡がありました。日時は先方が指定してきました。模擬講義の内容については一応の指定がありましたが、ピンポイントでの指定ではありませんでした。

 この頃、論文本数が3本を超え、質的にも自信のもてる論文が完成したばかりでしたので、そろそろ公募でも声がかかってもよい時期であり、かつ、大変イメージの良い大学で私の専門が活かせる専門学部だっただけに連絡を受けた際、飛び上がるほどうれしく、日曜日なのにさっそく大学院の研究室に直行し、模擬講義の対策&論文の読み込みをしました。面接等の実施日まである程度日数があったので、面接と模擬講義の準備&提出した論文の徹底的な読み込みを抜かりなく行いました。面接・模擬講義までに、指導教授と面会し模擬講義のキモはどこですか?等と質問したところ、丁寧に指導して下さったことを思い出します。当日ははりきっていたこともあり、40分前に現地に到着しました。

2.当日

 学内をあちこち見学した後、学部長室に5分前の9時55分に到着、誰もいませんでした。そこで、事務の人が動いてくれました。10時過ぎに本日の主査と思われる先生が登場しました(名刺を頂きました、こんな未だ専任教員でもない者に丁重に接してくれて少し感動)。主査に連れられて、〇号館の教室(大教室)まで行きました。そこに3名の教員が学生のように大教室内で待っていました。形式的に紹介してもらいます。若手2人+もうひとりは年配風の教員+主査も模擬講義をきいてくれました。一番若手の教員がチョークケース貸してくれ、少し気持ちが和みました。印刷したレジュメを配布した後、模擬講義開始、配布したレジュメをもとに行います。事前に何回も練習していたことや、既に非常勤講師としての経験があったのであまり緊張することもありませんでした。30分程度で終了。終了時間10時48分でした。

 その後、学部長室に案内されます。面接までしばらく時間があり、こういう時に当たり障りのない話題を提供できるようにならなければと強く思いました(何かしゃべったらボロが出るので、無口な人を装っていました)。

3.面接

 面接では、いろいろなことが質問され、回答しました。面接終了後、主査の先生のお見送り有り(少し感動)。面接の詳細は以下で詳述します。なお、当該大学は交通費の支給がありました(最近は交通費を支給する大学が激減しているのは残念なことです)。

関西圏中堅私大・専門学部②(面接の詳細ー概要)

 全体的に和やかな雰囲気だったのがかなり意外に感じました。関西という土地柄のせいなのかとも思ったものの、先生方の半分は首都圏の大学出身なので、大学自体のカラーなのかもしれないと理解しました。提出した論文を徹底的に読み込んで疑問点を突っ込んできた、前述の関西圏底辺私大とはかなり雰囲気が違うものでした。経験的には、今回の雰囲気のような場合が圧倒的多数です。今回、論文審査のような質問は事実上ありませんでした。

 主査の先生から、今日の結果を教授会に報告し、そこで採用・不採用が決まるとのお話がありました。そのため、この段階では採否は分からないとのこと。先生方は、「あなたが採用されるかどうかは分からないのでそのつもりで」と釘をさし、「これから採用される前提で話をします」と仰られました。とはいえ、かなりふみこんだ発言が多く、採用を期待させるようなところが多かったことも事実で、採用をつい予感したものです(面接の場では、一応絞りにかけているのでどの候補者が採用されてもおかしくないですし、近い内に他大学で採用される可能性が高いこともあり、面接する側はすべての候補者に対して採用されることを前提に話をします、これはどの大学でも共通に見られる現象で、よほどのとんでもない教員が面接担当者でない限り、面接担当者はあからさまに不採用を確信するような発言をしないものであることを経験的に学びました。当時の私は愚かにもこのことが十分に分かっていませんでした)。

 模擬授業に対しては、基本的には問題ないらしく、お褒めの言葉を頂いたので多分成功だったと思われます。

 以下に面接で聞かれた質問とそれに対する私の回答を書いています。質問への回答は、これが模範であるとは決して思っておりません。欠点が目に付くかもしれません。これから面接に臨もうと考えておられる方は、一つの参考にして頂ければと思っています。

関西圏中堅私大・専門学部③(面接ー質問と回答)

①先程行った模擬講義について。なぜそのテーマを選択したのか?                  →最近話題で学生も興味をもちやすいところだから。

②あなたが専攻し、かつ、本学で担当することになる科目において、その科目全体において、どの部分が重要と考えているのか?                                   →模擬講義で講義をしたところではないが、〇〇と〇〇が肝と考えています。

③今日の講義で学生に何を伝えたかったのか?                          →○○の機能と限界について

④模擬講義のために予習しただろうが、予習にかけた時間はどれくらいですか?              →12時間以上。

⑤最終的な講義の到達点はどこなのか?                            →ケースから入り、ケースのみならず理論面について十分に理解する程度に昇華させること。

⑥本学の学生はどちらかというと勉学熱心な、意識が高い者ばかりではない。一方で、著名大学大学院の研究者コースに合格した者もいるなど学力層は幅広い、このような大学においてどう講義を展開するつもりなのか?                                        →基本事項を徹底することには時間をかけ、上位層の要望にも応えるために発展的・応用的な内容についてもごく簡単に紹介はしたい。更に必要があれば、個別対応を考えたい。

(講義に関する質問と回答が終わった段階で、先生方から講義に関する感想を教えてくれた)

⑦今回の公募においては任期付教員としての採用である。任期付教員は5年で任期満了、例外的に更新が認められるとしても1回だけで。このことを十分に分かった上で応募しているのか?(本学部では、10年間在籍している教員は少なく、5年前後で他大学に移籍している教員も少なくないのが現状なので、移籍前提で着任してほしい)                               →最近は、任期付が増えているので気にしてはいない。移籍前提で着任してほしいとまで事前に言って下さる誠実なところなので、大変有難く思っている。

⑧これまでの教員とは職種が違うと理解した方がいいかもしれない。教育に特化した、しかし大学行政(教授会出席以外がすべて免除)は免除された職種(学内の○○委員、全学〇〇協議会の委員といった委員になることや、高校回りをする必要はないとのこと)である。研究は存分に行い移籍してもらっていいし、対外的には専任講師なり准教授と名乗って構わない。この条件でいいのか?          →大学行政が免除され、研究が存分にできるというのは大変有難い。まだまだ研究面では同年代と比較すると十分ではないので、研究に打ち込め、学生指導ができ、大学行政から免除された職種というのはまさに自分が望んでいる職種である。

⑨研究面ではなぜこの分野を研究しているのかに始まり、これまでの研究履歴を研究業績リストと共に辿り、簡単に確認した上で、今後の方向性をアドバイスするような感じの応答が複数回繰り返された。                                   →大変有益なアドバイスが多く、感謝の気持ちでいっぱいであった。

⑩書類にいろいろ必要事項を書き込み、その書き込んだ書類をもとに教授会で審議される。     →特に記載すべきことなし。

⑪採用に至るプロセスを話してくれた。採用ならば電話がある。採用が決まればその後は早いとのこと。                                             →採用までのプロセスは、出身大学のプロセスしか知らなかったので、大変興味深く拝聴した。急ぎの時は電話をするということらしい。

⑫履歴書を辿っていき、大学受験の浪人期間等、疑問に思われる点はすべて質問してきた。      →質問には可能な限り疑問を解消できるべく解答するよう努力した。どうも、教授会で各候補者の詳細を説明し、質問があればそれに応対する必要があるのだろうと推測した。

任期付は条件的にあまりよくない。それでも希望するのはなぜか?               →非常勤講師(現在)からすれば、任期付でも専任になれるのは大きいこと、5年間でそれなりの研究業績を出し移籍しなければならないというのは、厳しくもやりがいを感じるので、是非とも貴学の研究・教育に貢献してまいりたい。

⑭本学における責任コマは6コマである。6コマ担当することができるのか?もし、もてない科目があるのなら申し出て欲しい。というのも、採用が決まれば直ぐに教務課が時間割を組む必要があるという事情があるから。                                      →特にもてない科目は、ない。特殊な科目でない限りは対応可能。

⑮本学志望理由は?                                     →首都圏にいて貴学は大変イメージの良い大学だという評判なのが大きい。(なお、この質問をする大学は極めて稀。当たり前すぎてこんな質問をしないことが多い。)

⑯今後、キャンパスが分散する可能性があるので含んでおいていてほしい。            →了解しました。(小規模な移転かと思っていたら、大規模な移転がなされるようだ。これは知らなかった。)

⑰本学で採用される際の職位は、専任講師か准教授。博士号があるので准教授採用が可能かもしれない。                                            →了解しました。職位にはこだわりはあまりありません。

補足

 2つの大学から面接等に呼ばれ、大変光栄でしたし、良い経験ができたと思って家路に着きました。その後、いずれもの大学とも不採用だったのですが、最初の関西圏底辺大学は、採用は無理だろうなと面接時に悟りました。採用されたのは研究会で顔なじみの研究者でした。

 2つ目の関西圏中堅私大は、ひょっとすると採用されるのではないかという思いがありましたが、面接・模擬講義から1ヶ月後何の連絡もなく普通郵便で不採用通知が来ました(採用される場合、経験的に面接から採用の連絡までが早いことが多いように思われます:場合によれば「非公式ながらあなたを採用したいと考えている」と面接終了時にぼそっと伝えてくれることを別の大学で経験したことがあります)。論文がそれなりの本数に到達してはじめての面接だっただけに期待が大きく、その反動でショック大でした。面接から採否の結果が分かるまでの1ヶ月近く研究を十分に進展させることはできませんでした。この点、猛省しています。現在、大学教員公募にチャレンジしている公募戦士の皆様には私のようにならないよう、是非とも研究と公募活動との両立を図るべく気を付けて欲しいと思っています。面接が終わればすぐに研究に戻ることを意識づけているだけでもかなり違うと思います。なお、4月になり採用された方をHPで確認したところ全く知らない方でしたが、以前から当該大学・主査の教員と密接な関係がある研究者だったことが分かりました。ひょっとすると巧妙なやらせ公募だったのかもしれない、だからこそ可能な限りのことを教えてくれたのではないかと痛感した次第です。今にして思えば、やらせ公募ではないものの、当時の私の履歴・研究業績のレベルはまさにあて馬として適任だったのだろうと感じています。学界で求められる研究業績のレベルはクリアーしているものの、採用された方には及ばないレベルでしたので。

 とはいえ、不採用が分かれば、他大学の公募にどんどん出すしかありません。その後、私は、教員公募の書類を出せるだけ出すことにしたのでした(続)。



 

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