丸紅ー日豪間のアンモニアサプライチェーン構築ー

投資
Dirk HeuserによるPixabayからの画像

クリーン燃料であるアンモニアを巡る動き

 2021年7月20日、丸紅株式会社は以下のことを公表しました。即ち、丸紅並びに独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、北陸電力株式会社、関西電力株式会社および Woodside Energy Ltd.が、オーストラリアから日本へのアンモニアサプライチェーン構築に関する事業化調査を共同で実施することに合意し、共同研究契約を締結したことを公表しました。

 アンモニアは、燃焼時に CO2 を排出しないという特徴を有していることから、大量のエネルギーが必要となる火力発電所・船舶用エンジン等における次世代における燃料として有力視されています。また、製造・貯蔵・輸送に係わる技術が既に確立されていることから、ゼロエミッション燃料の中では比較的早期に実用化され社会的に広く用いられるであろうことが期待されています。

 既に本ブログでクリーン燃料であるアンモニアについては、三菱商事が手掛けていることを紹介しました。この件に関しては、以下をご参照ください。株主通信より①ー低・脱炭素社会実現に向けた三菱商事の取組(特集1) https://www.syagakuken.com/mitsubishicorp-soukaigo2021/

国の政策・外交との関連

 国は、2021年6月18日付けで「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を打ち出しており、その中でクリーン燃料であるアンモニアについても重要分野の一つとして位置付けているところです。アンモニアについての国の見解は以下の通りです。

 燃焼しても CO2を排出しないアンモニアは、石炭火力での混焼等、水素社会(=脱炭素社会)への移行期では主力となる脱炭素燃料です。石炭火力1基にアンモニアを 20%混焼(カロリーベース)した場合、20%の CO2排出減となり、仮に国内主要電力会社の全石炭火力での 20%混焼を実施した場合には、国内の電力部門からの CO2排出量の約1割を削減することになります。利用面では、燃焼を安定化させ NOx 発生を抑制する技術は、20%混焼では既に完成しており、2021 年度から 2024 年度までは、実機での 20%混焼の実証を行います。2020 年代後半には実用化を開始し、2030 年時点では、年間 300 万トン(水素換算で約 50 万トン)規模の燃料アンモニアの国内需要を想定しています。2030 年代は導入を拡大し、将来的には混焼率の向上や専焼化を図るとともに、発電用バーナー(混焼・専焼)の東南アジア等への展開や、利用用途の拡大も図ります。また、供給面では、プラントの新設等を通じて国際的なサプライチェーンをいち早く構築し、世界における燃料アンモニアの供給・利用産業のイニシアティブを取ります。あわせて、燃料アンモニアの安定的かつ安価な供給に向け、製造や輸送・貯蔵の大規模化や高効率化といった技術開発を進める。その他の脱炭素燃料についても、活用に向けた検討を進めます。具体的には利用・供給の以下の対策により、2050 年には年間 1.7 兆円規模のマーケットが見込まれ、我が国がコントロールできる調達サプライチェーンとして国内で年間約 3,000 万トン(水素換算で約 500 万トン)の燃料アンモニアの国内需要を想定し、世界全体で年間1億トン規模の需要量を目指します(内閣官房ほか「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 令和3年6月 18 日」46頁)。

 また、オーストラリアとの関係では、2021 年 6 月 13 日の日豪首脳会談において、燃料アンモニアを含め、「技術を通じた脱炭素化に関する日豪パートナーシップ」が発表され、また同年7 月 15 日の日豪経済閣僚対話での共同声明において、クリーン燃料アンモニアに関する取組を日豪間で協力して進めることが言及されたことも重要です。

何をするのか

 上記の5団体は、天然ガス由来のアンモニア製造の過程で排出される CO2 にCCS・CCU(**)や植林等の CO2 排出削減対策を組み合わせたクリーン燃料であるアンモニアについて、豪州での生産、日本への海上輸送、発電用・船舶用燃料用途としての利活用およびファイナンスの検討等を含めたサプライチェーン全体の事業化調査を実施します。そして、5団体は各々が有する技術、知見を活用することで豪州と日本の間におけるクリーン燃料アンモニアサプライチェーンの構築に努め、日豪両国の脱炭素化に向けた取組みを推進するものです。

株式投資家としての見方

 大手商社は、将来を見据えた中長期的ビジネスを展開し、そのことにより相応に利益を上げる必要がありますが、アンモニアの件はまさにそういう種類のビジネスであると考えます。大手商社らしい正統的な取り組みであり、かつ、当然グローバルな内容と思われます。丸紅の株主である私としては、この取り組むを好意的なものと考えています。そして、事業の成功を期待しております。株価にも良い影響があることでしょう(株式投資は自己投資でお願い致します)。

 また、丸紅は頻繁に事業の推移を公表している点は、情報公開の透明性が高いとみられるのでプラスに捉えられるのではないかと思います。頻繁に事業内容を可能な限り公にしていくことは、株主に安心感を与えるので極めて重要であると再認識しました。

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