研究との出会い

学生と研究

 講義が開始した大学生の皆様、お疲れ様です。皆様のように大学で学んでいる人をざっと列挙すると、大学生(学部に所属)、大学院生(大学院に所属)、科目等履修生、聴講生、研究生、国費留学生、私費留学生、内地留学生、交換学生等々を挙げることができます。このよう多くの方が大学で学んでいます。ここでは、大学生、特に大学1年生・2年生など大学に入学して時間がさほぼ経過していない方々が研究にどのような形で触れることとなり、研究に興味や関心を抱くようになるのか、書いてみます。典型的なケースをあげ、若干のコメントを付けることにより、大学院進学を考えている皆様の役に立ちますように。また、大学院進学にあたっては、学生の親御様をはじめとする学生の皆様を支えておられる方の理解も欠かせません。そのような方にも読んで頂ければ幸いです。

研究とは

上記に研究というワードをさらっと書きましたが、その内容を簡単に示しておきます。

研究とは、先達が解明した知見を基礎とし、人類が未到来の領域について一定の解明をなす行為と定義することができましょうか。おおよその定義なので正確ではないかもしれません。要するに、世界中の誰もが行っていない、未開拓の領域について一定の解明を行うことです。研究と対比される概念として学習をあげることができますが、学習とは、未開拓の領域ではなく、既に解明されつくした内容を体系的に学ぶものです。

大学では概ね、学部生の頃には既存の学問を体系的を学ぶことに主眼がおかれ(学習中心)、研究は大学院に入学してからという暗黙の了解があります。しかしながら、大学教員はそれぞれの専門分野の研究者であり、自らの研究に裏打ちされた内容を体系的に講義するのは学部での講義になります。つまり、学部の講義は一見すると既存の解明されつくされた内容を体系的に学ぶだけのものと思われがちですが、講義を注意深く聞いていると最先端の内容について触れている場合が少なからずあります。学部での教育は、学習中心ではありますが、その中に研究という側面が含まれているとご理解頂ければと思います。

ただ、以下で触れますように、現状のカリキュラムでは大学1年生が入学早々興味のある専門科目を履修することはできないのです。そのため、意欲のある大学1年生は、自らの向学心・知的好奇心を満たすためには、別途方策を考える必要があります。

大学1年生と研究

今も昔も、大学では幅広い教養を有する人材を養成することが重要であるという誰しもが反対できない理念に基づきカリキュラムが編成されています。これは、戦前の大学が専門しか教えていないことを批判的に捉えた結果です(とはいえ、戦前は、旧制高校において教養に相当する部分の教育をしていたので的外れな部分もあります)。そのため、大学によれば、教養課程と専門課程とが明確に分けられ、専門分野を学ぶのは基本的に専門課程以降で、大学1年生の頃には教養課程に所属し語学・体育・一般教育(一般教養、通称パンキョー)に関する科目が主流で、専門科目を勉強する機会を大学での講義に求めることは難しい方もおられるでしょう。また、1年生でも専門科目を履修できる大学であったとしても、まだまだ入門段階の講義が主流なので、これまた大学の講義で研究に目覚める機会を得ることは多くはないでしょう。あえて申し上げれば、1年生対象の演習(ゼミ)が開講されている大学が近年増加していますので、1年生対象の演習で、自らが興味のある科目を研究しておられ、人柄としても尊敬できる先生との出会いに恵まれた方は、研究に若干の関心をもつ場合はあるでしょう。稀な例であるとは思います。

以上から、大学1年生が正規の講義・演習で研究に興味・関心をもつようになる機会を得ることは難しいのが現状です。そのため、勉学に燃えて大学に入学したばかりの大学1年生、大学2年生の諸君は大学での正規の講義・演習以外の手法による必要があります。

具体例①ー学術研究会

多くの大学には大学公認のクラブ・サークルがあるかと思います。体育会系(野球部、陸上部、水泳部等々)、文科会系(茶道部、演劇部等々)のほかに学術研究会というものが存在します。社会科学系の学問であると、おそらくは興味を惹かれるであろうクラブ・サークルがあるでしょう。伝統があり、入部(入サークル)する学生が多い学術研究会においては、大学1年生の段階から勉強会が定期的に開催され、何かの目標に向かって日々の活動がなされていることが多いでしょう。学術研究会もピンキリで入る際には十分に注意しましょう。

私の経験及び私と同世代の者からすれば、大学1年生から研究に触れる身近で手軽な手法の一つが学術研究会に入ることです。先輩という世代の近い・そして少し前に勉学を始めた方々からの勉学に関する種々のアドバイス、専門書についてのコメント、学内外の先生(研究者)に対する容赦のない批判、等々金銭的には計り知れない利益を与えて頂きました。実際、先輩の中には教えるのが上手で、図書館で夜遅くまでガンガン論文を読んでいる学者顔負けの先輩方もいましたが、その多くは大学院に進学し、大学教員になって活躍されています。

具体例②ーダブルスクール

社会科学系の学問は、分野にもよりますが、難関国家試験で課される科目である場合も有り得ます。司法試験・公認会計士試験・税理士試験などは皆様もご存じの難関国家試験でしょう。そのような資格取得を目指すには、現実的に試験に対応した予備校・専門学校が存在します。大学に通いつつ試験関係の予備校・専門学校にも通うという現象をダブルスクールといいますが、ダブルスクールをすることで、プロの講師陣から試験合格に必要なものを伝授されることでしょう。

プロの講師の講義は多くの人に分かりやすいだけでなく、興味深く・知的好奇心を刺激されることも少なくありません。かくして、国家試験を大学1年生から目指していた方の中には、国家試験の勉強をじっくりやることにより新たな自分の方向性を見出し、結果的に一つのことを深く極めたい、つまり大学院に進学したいという方が出現します。ダブルスクールをしている人の強みは、資格試験を目指す同世代の方と大学の枠を超えて交流できること、大学院入試の専門科目において国家試験の勉強をしていることから有利に働くことが有り得ること、を指摘できます。

具体例③ー専門演習(ゼミ)

大学2年生、遅くとも3年生あたりから、それぞれの先生方が専門演習(ゼミ)を開講し、ゼミ生を募集することになろうかと思います。このゼミ選びは大学院進学において極めて重要なので、後日詳述しますが、大学教員が考える大学院進学の理想像は、ゼミで尊敬する先生に出会い、研究を深めたいと考え大学院進学を決意した、というものですが、私はこのような理想像というのは胡散臭くて好きになれませんが、大好きな先生もいます。

重要なのは、上記の学術研究会やダブルスクールで勉学に興味を抱き、勉学面で実力を向上させることは大学院入学試験突破を考える上で必須ですが、更に、大学院進学をふまえた上で理想的な先生のゼミに入ることも極めて重要です。学内外で知名度があり、学生個々人に対する面倒見が良く、大学院進学にも理解があるというのが理想ですが、なかなか理想をすべて兼ね備える先生は多くはないでしょう。また、おられたにしてもゼミに入れるかどうかというのは別の問題としてあります。ともかくも、大学1年生の頃からゼミや先生に関する情報を収集した上でゼミ選びに失敗しないことが大切です。そういう意味において、学術研究会に限りませんが、学内で情報を収集できる基盤を整備することが、大学1年生・2年生には必須のこととして求められていると考えます。

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