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図書館
私ども社会科学を専攻する研究者はもちろん、学生・院生の皆さんにとって、専門書や論文を読むことないし研究の進展は有り得ません。つまり、大学の図書館は私共の日々の研究を支えてくれていることは厳然たる事実です。例えば、研究初期の頃、どのような本が存在し、自分にとって必要な本は何なのか、先生方から指導されることもありますが、現実にどのような本が存在するのか自ら手に取って確認し、必要な本を自由に館内で読むことのできる図書館は有益です。また、研究が進展し洋書を読む際にも同様です。更に、研究を深めていくと自分の図書館には所蔵のない本や論文が存在することに気付きます。あの論文があれば研究が進展するのに、あの本があれば大いなる助けになるのに、という思いをしたことのある方もおられるでしょう。その際に有益になるのが相互利用という制度です。
相互利用の必要性
いかに所蔵冊数が日本有数であっても、和書・洋書ともすべての利用者、特に専門分野の研究をしている研究者・院生の希望を叶えることは困難です。そこで、我が国では、図書館同士が連携し、自分の図書館にはない本を他の図書館から取り寄せる、あるいはコピーをしてもらって郵送してもらう等という方法があれば大変便利であろうことはお判りいただけることと思います。この制度を相互利用と申します。
相互利用は、学部生・院生など大学に学籍がある方であれば利用可能な制度です(聴講生や科目等履修生、非常勤講師の利用の可否は図書館毎で違うことと思います)。例えば、自分はA大学の院生だが大学の図書館には自らが必要であるXという本がないので、相互利用でのXの貸借をお願いすると近隣のB大学からXが送られてくることになります。期限内に本を読むことができます。同様に、論文等であれば掲載誌・巻号・頁・題名などが分かっていればコピーをお願いすることになります。通常、大学図書館の利用は無料ですが、相互利用は郵送費等のお金が必要となるので多くの大学では実費負担が求められます(そうでない大学も稀に存在するようですがレアケースです)。
大学間の相互利用協定
近年では、同じ地域に存在する、設立の趣旨が類似している、個々の大学間の交渉等により、それぞれの大学図書館が他大学図書館と相互利用協定を締結しています。そのことにより、学生・院生の皆さんは以前のように紹介書を図書館に発行してもらい、訪問日時の詳細と利用したい文献を事前に提出するという大変な手間をかけることなく、自由に他大学図書館を訪問し文献の利用等ができます。貸出までできるのか、等詳細な条件は相互利用協定で規定されていますので、自分の大学がどの大学と相互利用協定を締結しているのかを調べておくといざという時に有益でしょう。
相互利用ー社会人の皆様の場合
私はまだ大学・大学院に入学していないので大学図書館は使えないよとお考えの方がおられましたら、大学図書館の通常の利用でしたら国立大学・公立大学を中心に近年ではその大学の出身者(OB、OG)はもとより、希望する方の利用を認めるところが増えました。一定の金銭の支払いを条件に図書館利用を事実上容認している大手私立大学も存在します。
ただ、上記のような場合、大学図書館を窓口に相互利用のお願いをすると断られる可能性があります。その場合、いわゆる公共図書館(市区町村立図書館、都道府県立図書館など)で自らが利用できる図書館があろうかと思います(自分の住民票がある場所の公共図書館)。特に、都道府県立図書館のレベルであれば研究分野によれば大学図書館と同じかそれを凌駕する程度の質・量を誇るところもありえますので、ご利用をご検討ください。それでも資料が見つからないようでしたら、地元の公共図書館を窓口に相互利用をお願いすることが可能です。社会人で勉学の意欲はあるものの、必要な資料の大半が収集できないようではどんな方でも勉学意欲を失ってしまいます。そこで、公共図書館を窓口に相互利用のお願いをすることにより是非とも必要な書類を入手し勉学を継続して頂きたく願っています。
社会科学研究者における文献の重要性
社会科学の研究において、どれだけ良質な文献(本・論文)を収集しているのかにより、論文の水準・質というものが自ずと定まってきます。それだけに、文献を探し出すことは一つの能力だと喝破する先生さえおられます。一行しか読まない論文であっても、その一行を読むことで研究が一気に進展することもあります。その一助として図書館の相互利用をご検討頂ければ幸いです。
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