文系研究者と本

研究・教育
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本の重要性

 文系研究者にとって、研究分野によれば実態調査・アンケート・フィールドワークを伴う分野もあるかと思いますが、少なくともどの分野であっても論文・著書といった研究成果を無視して研究を行うことは不可能です。論文や著書を無視しての研究とは、文部省検定済教科書を持たずに教室で授業を受ける小学生のようなものです。

 上記からお分かりの通り、研究者にとって本や論文は大変重要なものです。大学教員の研究室もしくは自宅の書架に膨大な書籍がある状況を実際に見た方もおられるでしょう。研究生活が長くなればなるほど書籍の量も増えていきます。もちろん、最近では、学術データベース等を利用してインターネットで論文等を収集することが可能になり、資料収集が以前よりかなり楽になりました。しかし、学術研究書や記念論文集といった研究において不可欠なものは、本として(紙媒体でのみ)提供されているのが現状です。そのため、すべての資料をインターネットで収集するわけにはいきません。また、研究分野にもよりますが古い資料を検討する場合であれば、もはや絶版になっていて大学図書館の書庫に潜って本をコピーするか借りるしかありません。本日は、研究者とくに文系研究者(大学教員)にとっての本を巡る状況につき情報提供します。以下の意見・評価に関する部分は個人的見解です。

本ー買うのか借りるのか

 研究者の多くは、院生時代を経験していることと思います。場合によれば専業非常勤講師・ポスドクの経験のある方も少なくないでしょう。このような頃、一部の例外を除けば、金銭的に恵まれているわけではありません。そのため、本を買うのには大変な勇気がいります。専門書となれば、薄い本でも数千円はしますし、研究に特化したような専門性の高い本では1万円を超えることはザラにあります。また、洋書ならば数万円することも一般的です。一定の収入ある方でも購入するか迷う価格帯かと思われるところ、院生・専業非常勤・ポスドクは経済面だけから見れば本を買うのは大変なことでもあります。そのため、必要最低限の本は買うものの、そうでない本や高額な本は購入を見送る方もおられるでしょう。私もそうでした。

 他方で、専門書はさほど部数を出版しませんし、重版を出したり増刷をかけたりすることは、専門性が高い本であればあるほど可能性は低い傾向にあります。そのため、良い本が出たなあ、買いたいけれどお金はないから購入を見送ろうとなり、バイト等でお金を貯めた時には、書店に本の姿はなく出版社に問い合わせたら絶版とのこと。失意のどん底に叩きつけられたという経験をした方は一定数おられること思います。

 そのため、自分が必要である本を買えなければ、その本が大学図書館に所蔵されているのならばその本をコピーする場合も多いでしょう。ただ、著作権法では半分以上のコピーは禁止されている等、厳格な規定があります。そのため、本を有していないと大変使いにくいことになります。借りるにしても、一定期間が過ぎれば返却しないといけません。

 以上から、論文執筆のために熟読したい本や執筆に不可欠な本は購入した方が望ましいでしょう。重要度はさほどでもない本や引用等一時的に確認するにすぎない本は借りるだけでも構わないかもしれません。とはいえ、重要ではない本をペラペラ読んでいる時にいろいろな気づきがあることも事実です。必要最低限の本しかないという状況は、研究能力を伸ばすという観点からすれば望ましいことではありません。そのため、院生研究室を生活の本拠とし、毎日、朝から晩まで論文を書き、疑問があれば図書館に行くという生活スタイルになるのも無理からぬところです。

専任教員になってから

 本を巡る状況は、院生・専業非常勤・ポスドクの頃と専任教員になってからでは格段の違いがあります。これはご想像の通りでして、専任教員になれば生活するだけの給料が支給されること、大学によりかなり格差がありますが研究費が支給されること、が大きいでしょう。経済的安定が本を巡る状況を格段に良い方向に変化させます。つまり、これまでのセコセコした本の買い方から、普通の感覚で買うことができるようになるのです。

 研究費は大学によりかなりの格差がありますが、科研費をはじめとする競争的研究費を獲得できる可能性が出てきます(現在、非常勤講師・ポスドクの方でも科研に応募することはできたかと思いますが、実際に応募できるのか否かについては大学により千差万別なのが実態のように仄聞しています)。科研費が採択されることにより、必要な本を整備することが可能になります。

本を買う時

 本を買う時、①書店で買う、②インターネット経由で(例・amazonがあまりに有名でしょうか)買う、という2つの方法が考えられます。人口の少ない地方都市だと専門書を豊富に扱っているような大型書店がないためインターネット一択になります。人口100万人を超える都市であれば、概ね大型書店があり、そこには研究書も豊富に整備されていることでしょう。実際にどういう本なのか確認できること及び自分が知らなかった新刊の書籍の存在を知ることができるのが①書店で買う、の利点でしょう。②インターネット経由の最大の利点は、書店に行く時間を省きPC上で買うことができるという点でしょう。既に、購入している本の改訂版や図書館で内容を確認した本を自分も所有しようという場合であれば、わざわざ書店に行く必要もなく、②の方法で購入するのが合理的と思われます。

 研究費で購入する場合は、大学間で違いがありますが、最近はインターネットでの購入を推奨するところが多いようです。

洋書購入に際してーamazonについて

 分野にもよるかと思いますが、和書に加えて洋書が必要になる場合もあろうかと思います。和書の購入は子供のころから慣れているだけにさほど迷いはないかと思いますが、洋書購入は研究者になろうかと決意したあたりにはじめて購入する、少なくとも、本格的に洋書購入に向き合うのははじめてかはじめてに近いという方もおられるでしょう。以前は、分野限定ながら洋書を専門的に取り扱うリアル店舗が存在しましたが、最近ではインターネットでの洋書購入が主流かと思います。

 では、どこで購入したらいいのかですが、私が経験した限りでは洋書を購入するにあたりamazonで購入することが多いことをお知らせしておきます。amazonでの購入が最も値段が安く(他より1割以上安価のことも間々ありました)、早めに到着したことを記憶しています。大学の研究費で購入する際には、amazonで購入することが多いですね。値段面で優れているのみならず、例えばアメリカで出版された本(洋書)を探す際、日本のamazonのみならず、現地であるアメリカのamazonを検索することで、日本では紹介されていない本の存在や出版予定の本の存在を知ることができたり、より詳しい出版日時や入手時期を知ることができるなど、ワールドワイドなamazonは研究者にとって大変有益であると個人的には感じています。

研究者の財産

 本は研究者にとって不可欠な物です。打者にとってのバット、料理人にとっての包丁、美容師にとってのハサミ、のようなものと理解していいかと思います。分野によれば、和書のほか洋書も必要でしょう。本は道具ですので、それをいかにつかいこなすのかが最重要です。もっているだけでは話になりません。目的は論文執筆なので、論文執筆にとって必要となる本は可能な限り所有することが理想でしょう。特に絶版がされそうな専門性の高い本は、無理をしてでも買っておくと良いでしょう。具体的に本を購入するにあたり、大型書店・インターネットでの購入になりましょう。洋書購入は上記の通り、私はamazonを利用しています。

 研究生活を振り返ると本が研究者の財産であることに気付くと思います。現在の自分があるのは、研究室の書架にある本のおかげであると痛切に感じます。熱心な研究者、評価されている研究者の研究室を訪問したことがありますが、ほぼ例外なく膨大な本が書架に収められていたことを印象深く記憶しています。私が着任早々、ベテラン教授が私の研究室を訪ねてこられて、「まだ本が少ないね、書架がいっぱいになるくらい研究することだよ」と助言されたことが忘れられません。本日は、いつもとは若干違う色彩ではありますが、文系研究者と本について情報発信致しました。

 

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