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ゼミとは
ゼミとは大学における少人数でなされるもので、大教室での講義では得られないより深い理解を得るべく学生が主体的に活動することが期待されている科目の一つです。多くの大学において伝統的に少人数教育が展開されてきたのは、ゼミ(演習、専門演習、セミナー等名称は色々)です、場合によれば卒業論文の指導がなされることもあります。また、卒論指導の形式での指導が事実上のゼミである場合もあります(大学・学部により卒業論文は必須ではないことがあり、特に社会科学系では伝統的に必須ではない大学が少なくなかった面はあります)。概ね2年生~3年生からゼミはスタートすることと思います。最近では、ゼミ以外にも少人数教育を受ける機会が1年次からあり得るかと思いますが、やはり学部教育における重要な意味を有するのはゼミです。ゼミに関しては大学教員サイドも大変関心を有していることも多く、あまり学生教育に熱心でない教員でも自分のゼミを履修する学生のことを少なくとも担任している学生と認知していますし、熱心な先生であればゼミでいろいろな行事をしたり、ゼミ生の面倒を見たり等も間々見られる光景ですし、ゼミ全体がfamilyだと考えていることさえあります。また、諸々の大学からの連絡もゼミの先生を経由して行われることもあります。かくして、(ゼミが必須でないのならば)ゼミに入るべきか否か、(入るとして)どのゼミに入るべきかは、学生諸君からすると大変重要です。特に、本ブログの根幹である研究者志望(大学教員志望)の学生諸君にとっては、どのゼミを選択するべきなのかは大変重要な問題でもあります。本ブログでは、大学教員の視点からゼミについて深堀していきます。
読者層としては大学生を想定していますが、どの先生のゼミを選ぶべきなのかは、大学院の指導教授を選ぶ際と基本的には同じです。ですので、本日の内容は大学院志望(もしくは現在院生)で指導教授選びを考えている方にとっても参考になろうかと思います。
ゼミ選択すべきか否か
大学・学部によれば、ゼミを選択することが必須ではない場合もあります。そのような場合、ゼミを選択すべきでしょうか。いわゆるゼミなしっ子の選択をしていいかどうかです。結論から言うと、自分なりに考えがあり、第三者に自分がゼミを選択しない理由を説得的・合理的に説明できるのであれば、ゼミを選択しなくてもいいと考えます。ただ、ゼミを選択しないことは多数派の行動パターンとズレるので、ゼミを選択しておいた方が無難な面はありましょう(いろいろな書類、特に推薦書の執筆をお願いする場合などはゼミの先生であればお願いしやすいでしょう、なお、最近の大学院入学試験受験において、少なくとも国立・公立大学では推薦書の提出を求めないのが普通ですし、それに倣う私立大学も少なくありません)。そこら辺を勘案して最終的に結論を出すと良いでしょう。ここで申し上げたいのは、入りたくもないんだけれども嫌々ゼミを選択するようなら選択しない方がましです。それは、自分自身、他の学生、教員、みんなを不幸にしますから。
ゼミの選び方
ゼミを選ぶ頃には一定の時間、大学に在籍しているので、それなりに大学に関する色々なことを耳にすることになるでしょう。例えば、うちの学部の看板教授は〇〇先生で〇〇先生のゼミに入るのはかなり難しいようだ、〇〇教授は一見地味だが〇大出身だけあって人脈が広くゼミ生の就職では段違いだ、等の情報に接していることでしょう。では、どのゼミを選ぶべきなのか。自分の進路・希望にあわせたゼミ選びが肝要と考えます。
大学院進学希望者は、ゼミの先生に何かとお世話になるのでそもそも大学院進学を肯定的に考えてくれる先生なのか否かが最重要です。学者として一流でも、後進を育てるのを忌避しているような教員も一部ながら存在しますし、大学院進学は認めるけれど他大学の大学院受験を勧めているという場合もあります。そこらあたりのことを先輩等から情報収集するとともに、最終的には教員の意見を直にきくことが望まれます。あまり好意的に思っていなければ、そのような対応をしますから。
大学院希望はなく民間企業での就職を希望する方は、就職面で定評あるゼミを目指すでしょうし、それは当然のことと思います。場合によればゼミの教員からのプッシュを考えておられる方もいるかと思いますが、これだけ変化の激しい時代だと、昔のように〇〇大学の△△教授のゼミというだけで優位的地位に立つと考えているのはあまりに危険です。ただ、伝統あるゼミであれば、それなりに先輩が輩出されており、ゼミの名簿を頼りに先輩を訪問することは今でもなされていることです。その意味では、就職に定評あるゼミを狙うのは常道でしょう。
気を付けておくべきことは、自分の大学の先生方が他大学に転出しているケースがどの程度あるのか、という点です。人格的にも学術的にも優れた教員で地方の大学にいるのならば、首都圏・関西圏に転出する可能性が多分にあります。ですので、どう考えても数年内に出ていきそうだな、という先生のゼミに入ると途中で他の先生のゼミに移籍する可能性があります。
講義や一般的には評判の良い教員が、あなたにとって素晴らしい先生であるのか否かはケースバイケースであることも是非ご記憶して頂きたいことです。大学教員は、今や時間に追われて大変という面はありますが、外面だけがやたらによくて、一対一の面談の場合になれば、やたらに時間を気にしてまともな対応をしない、学生の話にろくに耳を傾けない、なんて例は間々聞く話です。酷いケースになると、怒鳴り散らしたり等ハラスメント行為に及ぶことさえあります。このようなことはなかなか分かりにくいことですが、講義後の質問対応の際に、教員の素が出ますので、本当に素晴らしい先生なのか、見せかけだけの先生なのか、皆様方でチェックする必要があります。
ゼミ選抜基準
かくして入りたいゼミは概ね決まった、入りたいゼミの先生も朴訥そうで裏表がなさそうで自分にあっていそうだ、先日も講義後に質問にいったら学生が教室から誰もいなくなるまで丁寧に教えてくれて論文までくれ少し感激した、等から入りたいゼミは固まった。何とか入りたいゼミに入りたいが、ゼミに入るには選抜があります。ゼミによって難しい・易しい、基準が明確・不明確という点がありますが、ゼミ選抜を経ないとゼミには入れません。
人気のあるゼミはもちろんですが、さほど人気のなさそうなゼミでも教員はとりたくない学生を落とすことができるシステムを採用している大学が少なくありません。そのため、どのような場合でもゼミ選抜基準を意識しておくことが望まれます。そもそも、ゼミ選抜基準は本来であれば一律であることが望ましいですが、現状では、ゼミ毎で基準が異なるという点を指摘せざるを得ません。教授会での申し合わせで、ゼミ選抜基準の平準化が試みられてもいますが、ゼミ毎に事情がある、最終的には先生方の責任で学生を取るという側面があることからゼミ毎で選抜基準が異なるのはやむを得ない面もあります。その上で、これまで私が知り得た選抜基準は以下の通りです。
第一は、学内成績です。学内成績の良い方から合格させていくということです。具体的には、学内成績でほぼ決めて次に述べる面接で余程態度が悪くなければ合格というのは結構多いと思います、また、ゼミ生を最低2回に分けて募集することになっている大学・学部では、第一次募集では成績順で取り、第二次募集以降は先生方がご自由にというパターンもあります。その他、先生が病気療養中もしくは留学中で事務局が選抜する際には学内成績オンリーで選抜することが多いですね。
第二は、面接です。面接を重視する先生方はかなりの多数派になります。面接をしない先生は少数派でしょう。面接する理由は2点あります。第一は、ゼミを引っ掻き回す、トラブルを起こしそうだ、教員に盾をつくような、そんな学生を炙り出してゼミに入れないという面と、第二は、学生のタイプ、将来性、自分のゼミに向くか否かを教育的に判断する面、の両面があります。成績はどうにもならないのなら面接対策に力を入れる必要があるでしょう。なお、面接以外でゼミ説明会や研究室等で教員と話をする場合、上記の2点を意識している場合が多いでしょう。
第三は、現ゼミ生(先輩)による紹介もしくは面接です。面接や成績だけではその人の本当のところは分からないので、現ゼミ生が紹介するような後輩であれば大丈夫だろうというある種のコネ人事に近いもので、先輩による紹介があればほぼ合格となります。先輩による面接というのは、まさにその通りでして、教員も立ち会いますがゼミ生が面接官になり面接を主導するということです。前者のゼミ生の紹介という手法(紹介なき限りお断り)は、公平性を欠くので、最近では珍しい手法です。かつて年配教員が好んで行っていました。この手法の強みは、ハイレベルな人材が継続的に集まるという点にありますが、あまりにも公平性を欠くし、人を知っているのか否かで合否判断することの理不尽さ等から現在の多くの教員は否定的です。また、ゼミ生の紹介があったとしてもゼミ生の評価如何によれば自分にとってプラスにもマイナスにもなります。後者の先輩による面接は、教育的効果を狙ったもので賛否が分かれるとこでもあります。面接する側に立ち、今後の就活の面接に活かしてほしいということです。
ゼミの合否
ゼミの合否は、就職活動における採用・不採用に近い面があります。突き詰めれば、縁があるのかないのか、により決まります。ですので、自分の行きたかったゼミに不合格になっても気にする必要はなく、自分の良いところを教員が見抜けなかったのだ、くらいの感覚で良いでしょう。
お詫び
1回で終了する予定でしたが、ゼミに関しては予想以上に書くべきことがありました。後日に続きをUPします。
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