目次
前回の復習
本ブログはかつて「専門分野の決定方法②」としてUP(令和3年4月15日)したものです(令和3年4月15日)。しかしながら、タイトルと内容との間に微妙にズレがあるため、タイトルを変更し、かつ、内容に若干の修正(大きな修正はなし)を加え再UP(令和3年5月6日)しました。
前回のブログ「専門分野の決定方法」https://www.syagakuken.com/sennmonnbunnya/ (令和3年4月13日UP)にて、大学教員を目指す研究者志望の皆様に専門分野の選択が極めて重要であるということを紹介しました。そして、自らの専門分野をどこにするのかにより、大学教員という研究者としてのポストを獲得することが極めて困難になる場合(一定の努力の継続だけではなかなか難しく、尋常ならざる努力と期間が必要になる)、そうでもない場合(一定の努力を継続することで何とかなる)がある等、専門分野によりポスト獲得の難易度は千差万別であると申し上げました。では、具体的にどのように違うのか、現実に私が知り得たケースを中心にご紹介し、いかに専門分野の選択が重要であるのかをより深く理解し、大学教員と専門分野の関係についてご理解頂ければと思います。
大学教員になるまで
研究者が大学教員になるまでの一般的な道筋は以下の通りです。大学学部入学・卒業→大学院入学試験合格→大学院博士前期課程(修士課程、マスターコース)入学・修了→大学院入学試験合格(ドクター試験)→大学院博士後期課程(博士課程、ドクターコース)入学・修了(この段階で、博士(〇〇学)の学位が与えられる)→ポスドク・非常勤講師(一定年数経験、長短あり)→〇〇大学△△学部専任講師(もしくは助教)として採用。専任講師や助教は、大学の専任教員ですからこの段階に至れば、一安心です。とにもかくにもここに到達するまでがどういう専門分野であっても大変で、かなりの努力を必要とします。ただ、専門分野により、概ねまじめにやっていれば早い遅いの差はあれど専任教員になれる場合(=恵まれた専門分野の場合)とポストが少ないので生半可な努力ではどうにもならない場合(=恵まれていない専門分分野の場合)があることは、既に前回述べたとおりです。今回は、この点を深堀します。
恵まれた専門分野の場合
大学院の博士後期課程を最短の3年で修了し(博士の学位を取得)、修了と同時に〇〇大学△△学部専任講師(又は助教)として採用されるのが、最も順調にポスト獲得がなされたケースです。特に、大学受験・大学院受験等で浪人期間及び留年期間がない方であれば、27歳の段階でポストをゲットすることになります。現に、そういう方はそれなりの数おられます。お察しの通り、そういう方の専門分野においては、ポストの絶対数がそれなりにあり、(ポスト獲得において)恵まれた専門分野であることが大半です。
恵まれた専門分野であれば、博士の学位(=博士号)と3本程度の学術論文があれば(更に、どこかの大学で非常勤講師の経験があればより確実でしょう)、最短27歳、遅くとも30歳前後までには専任教員のポスト獲得が現実のものとして考えられるでしょう。現実的にも博士後期課程に4年もしくは5年在学しポストを獲得した方、博士後期課程は3年で修了しつつ、1年か2年の(出身大学での)助教経験、ポスドクもしくは非常勤講師経験でポストを獲得した方は決して少なくなく多数派になります。但し、このような恵まれた分野でも少なくとも3本程度の公表済の学術論文(学術専門誌に掲載された論文)がないようでは大学教員公募戦線では話になりません。そしてそれなりの内容の論文であることが求められます。そのため、恵まれた専門分野であるにもかかわらず、いつまでも専任教員になることができず、長年にわたり非常勤講師生活を継続している方がいます。その大半は、年齢相応の論文数がない方です。論文がなければ研究をした裏付けがないのですから、いかに人柄や教える力が抜群でも研究者である大学教員として採用することはできないのです。
恵まれていない専門分野の場合
恵まれていない専門分野であっても、制度的には恵まれた専門分野と同じなので、大学院博士後期課程で博士の学位を取得するところまでは同じです。そこからが大きく異なります。博士後期課程修了直後の27歳で大学専任教員になれることなど奇跡中の奇跡です。また、30歳前半までに専任のポストを獲得することもこれまた不可能に近いのです。恵まれていない専門分野の場合、はじめて専任教員になることができるのが、概ね40歳前後、45歳前後でも珍しくないということさえあります。場合によれば50歳を過ぎて専任教員になることはできず非常勤講師をしているとか、最終的には専任教員が定年をむかえる年齢まで非常勤講師を継続しているという例も専門分野によればそれほど珍しいことではありません。このように恵まれていない専門分野で非常勤講師を継続している方は、論文数・質はもちろん単著の著書が数冊あることも珍しくありません。研究者としては極めて優れている方なのです。そのため、年齢的には高くなっても専任教員として採用される可能性が残されているので、非常勤講師生活を継続するのです。このような方がご自身の専門に近く、それほど就職が厳しくはない分野を専攻していたらとうの昔に専任教員になれたのではないか、と思うことさえあります。
おわりにー自分の経験からー
私は、恵まれた分野でも、恵まれていない分野でもない中間的な分野を専攻しています。なので両者のことがよく見えたのかもしれません。そして、私の予備校での浪人期間中に(かつて恵まれていない専門分野を専攻していた院生から予備校に転じたと思われる)何人かの予備校講師の先生方から大学の専任教員になることがいかに困難であるのかを様々な例を通して教えてくれました。そのため、私は、学部生の頃、大学の専任教員になるのは専門分野の別を問わず大変厳しいものだと誤解していました。大学院に入学し、先輩方と交流し先輩方の生きざまを見る中で、専門分野による圧倒的な差異を見せつけられる思いがしました。まさに専門分野の選択により人生そのものが大きく変わってしまう現実に、大変驚きました。また、今にして分かることですが、いわゆる大学の格・偏差値の序列よりも専門分野の違いによる格差の方がえげつないものがあると断言してもいいくらいです。
研究者である大学教員はやりがいのある仕事であると確信していますが、専門分野による差異についてはあまり語られることがありません。そのため、一度落としましたが重要なのでタイトルを変更し再度UPし、情報提供します。ご参考まで(令和3年5月6日再UP)。
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